約20年前のことです。三男が特別支援学校の小2の頃、三男と妻は民間の療育教室に週1で通い始めました。
そこで指導されたのは、「まずPECSをしっかりやってください」でした。家で写真を絵カードとしては少し使っていましたが、PECSはまだ知りませんでした。
療育教室で使われていたPECSの絵カードは、私にはとてもダサく見えたのです。心の中では、「私ならもっと良い絵カードが作れるだろう」と思っていました。
週末、デジカメで写真を撮って、Excelで絵カードデータに仕立てました。と同時にAmazonで、材料を注文。
- 薄いスチレンボード
- 薄いマグネットシート
- 透明な粘着フィルム
- 定規付きスチレンボードカッター
これで、ラミネータがなくても美しい絵カードが量産できるはずでした。
最初に作った絵カードは大失敗
次の週末、届いていた材料で作成開始。
絵カードデータの印刷は完了。各材料のサイズ出しも決定。3cm四方のサイズにしたと思います。


材料をカットして、丁寧に重ねて、最後に透明粘着フィルムで包みました。
磁石式なので、ミニホワイトボードで使う想定。冷蔵庫の扉にも貼れるし、利用シーンは広い。はずでした。

ところが、ところが、磁力がとても弱い。すぐに落っこちました。
マグネットシートむき出しにすると、製造に問題が出るので、そう簡単には改善できません。
たった、一週間でお蔵入りになりました。
ラミネーターを買って、オーソドックスな絵カードに改める
初期型絵カードは一週間で諦めて、療育教室で見た絵カードと同じ構造の絵カードへ作戦変更です。
自閉症支援界隈で一般的な絵カードはちゃんと意味があったのですね。
再び、Amazonで注文です。
- 小型ラミネーター
- マジックテープ (これが結構高い)

次の週末、絵カード作成に再チャレンジ。
結構手間が掛かりました。まあしょうがないか。
そして、療育教室で使っているのと、ほぼ同じも物が出来上がりました。
療育教室では、3.5×3.5cmサイズを使っていましたが、室長があなたのお子さんは少し小さいのが良いでしょうという指導のもと、サイズは小さめにしました。
三男は、順調にPECSの絵カードを使い始める。
この頃、私はPECS講習会を受講しました。受講して驚き!!
PECSは見た目以上に、実は高度で効果が高いのです。早速妻にも、翌月のPECS講習会を受講させました。
PECSをちゃんと習うと、効果が違います。
三男は順調に絵カードを使うようになっていきました。まだ、フェーズはⅢですがね。
PECSを家でやるようになって初めて、療育教室の室長が行っていた「この絵カードのマジックテープは、絵カードに浮きが出るのがいいんですよ。自閉症児は手先が不器用だからね。」の意味を実感したのです。

他の家庭では、どんな絵カードを使っているのだろう?
やはり、他の家庭が気になって、知り合いやブログ仲間を10人ほど集めて、持っている絵カード調査をしてみたのです。
我が家も含め17人分の絵カードの利用データがそろいました。
すると、とても興味深いことが見えてきたのです。

「ください」と「じゃかりこ」の絵カードは調査対象者の3分の2の人が使っています。上位10枚は、約半数の人が使っています。そして、1人にしか現れない絵カードが約700件あります。
絵カードはロングテールなのです。仮に100枚の共通絵カードセットがあっても、足りません。1,000枚の共通セットがあったとしても、我が子だけに必要な絵カードが出てくるので、自作せざるをえないということが、その当時から私にはわかってしまいました。
他の家族のために、Excelの台紙をネットで公開した
共通絵カードセットの配布はもう諦めたので、せめてテンプレートだけでもと思い立ったのが、Excelの台紙の公開でした。
ハサミで切り取るための絵カードデータのプリントアウトは、実は難易度が高いのです。サイズ合わせ、位置合わせ、写真の入れ込みなどなど。WORDでもExcelでもピッタリとは行かないのです。
Excel上でなんとかサイズ出しをして、他の人でも使えるテンプレートを作成して公開しました。
当時の小さなヒットです。この公開を期に、絵カード作り仲間が増えました。
ちなみに、現在はもう公開していません。もっと使いやすい「絵カードセンター」が後に出来たからです。
絵カードが増えてきたので、保存バインダーを妻が自作した
妻には初めから、こう指導していました。
- 一枚作る時は、同じ絵カードを2枚以上作る
- 一度に沢山は作らない、10枚以下にする
だんだん妻の方が絵カード作りが上手くなり、ラミネーターはA3の大型に買い替えました。大きい方が、温まるのが早く、ハサミを入れている間に、準備完了になるからです。

絵カードの整理が大変になり、妻が保存用バインダーを自作していました。とても使いやすいです。この頃には、絵カードが1,000枚を超えていたと思います。それ以降、絵カード作りの主役は妻です。
プリンターが無いお母さんからの相談が後に大ヒット
私が起業した1年後の頃だったと思います。当社製品のコバリテを購入検討のお母さんが、ある日訪ねて来ました。商品の説明後に、「自作絵カードを作りたいのですが、プリンターが古くなっているので、買い替えたいです。どの機種がいいですかね? 子どもに写真を見せるときは、スマホで撮って、カメラのキタムラでプリントアウトしているんです。」

ここでは詳しくは書きませんが、この会話が「絵カードセンター」の発想に繋がりました。スマホで絵カードの割り付けをして、写真L版用紙にプリントアウト。自宅で印刷できるが、プリンターを持っていない人は、コンビニやカメラ屋でもプリントアウトできます。

最初の絵カードセンターは、標準イラストから選択するようなWebアプリでした。半年かけて、スマホ内の写真からも絵カードが作れるようにしました。それが「絵カードセンター」の原型です。
そんなある日、事件が起きた
メルカリを何気なく見ていたら、見覚えのあるデザインの絵カードが売られていました。
当社が無料公開している「絵カードセンター」上で当社イラストを使って、無断で商品にしていたのです。初めに見つけた出品者は、他のフリマサイトでも売っていました。メルカリを検索したら、他にも数名、無断で商品にして出品している人がいたのです。

頭に来て、NEC中央研究所時代に習った、自社の権利侵害品を見つけた時の初動を実行しました。それは、証拠の確保。匿名配送ではない出品者から、その商品を個人名で購入し、証拠品と出品者の住所氏名を確保しました。
その後、メルカリに当該出品の削除要請と、発信者情報開示請求をしています。それ以上のことはしていません。
Excel派の妻がやっと絵カードセンターに乗り換えた
時代は進みますねぇ。妻がネットに費やす時間はパソコンより、タブレットやスマホの方が長くなっていきました。
妻はExcelでの絵カード作りに慣れきっていたので、長らく「絵カードセンター」を使ってもらえませんでした。
「絵カードセンター」は妻の要望も少しずつ取り入れて改善してきました。
今では、妻ももっぱら「絵カードセンター」で三男の絵カードを作っています。
変哲もない日常も、小さな進化はずっと続く
今では、絵カードのストックが2,000枚程度になっています。約1,500枚がPECS用の絵カード、約500枚がカレンダー用の絵カードです。

カレンダー用の絵カードは、コバリテ製品サイズの3.5cm四方。磁石式カードフォルダーをカレンダーボードに貼り付け使います。この絵カードは紙のままで、ラミネート加工する必要はありません。もちろん、この絵カードも絵カードセンターで作っています。
紙だけの絵カードは、数が増えてくると探し出すのに苦労します。子どもは探し続けるのですが、親にとっては見つけにくいのが苦痛になります。そこで、絵カードのキャプション位置は上側になるのを標準にしました。文字で探す方が、親にとっては断然探しやすいです。
ラミネート&マジックテープ式の絵カードにも作り方の進歩があります。
- テープ糊を使うと、ラミネートが楽になる。
- 絵カードの角を丸めるには、この文房具がいい。
などなど。小さな工夫が、絵カード作りを随分と楽にしてくれます。
2,000枚作って気づいたこと
絵カード作りをこれから始める方、そして今も絵カードを作り続けている方のために、そろそろまとめておきましょう。
- 【最も重要なこと】周りで最も多くの絵カードを作っている人のやり方を真似ること。
絵カード作りには様々なノウハウが必要です。
最初は、あなたの周りで最も多くの絵カードを作っている人のやり方を真似してください。作り続けることができているのには、理由があります。あなたがうまく作れなかった時は、教えてもらいましょう。快く教えてくれるはずです。同じやり方をしている仲間は貴重な財産です。
この後は、ポイントを羅列しておきます。
- 市販品やメルカリは諦めて、自作しましょう。あなたのお子さんだけに必要な絵カードが必ず出てきます。
- 写真とかイラストのテイストに拘る必要はありません。むしろ、作る人のモチベーションに影響するので多少の選り好みは構いません。
- 1枚作る時は、同時に2枚以上作ってください。絵カードの紛失に備えて。
- 一度に沢山作らないで、10枚以下にしておきましょう。一度苦労すると、次回の腰が重くなります。
- 道具は意外と高いのですが、ケチっては行けません。良い道具を使うと楽に作れます。
- 手を抜いてはいけません。それぞれにあなたの知らない理由があります。後でしっぺ返しが来ないように。
- 時間がない時は手書きでもなんでもOKです。絵カードがあることが最重要です。
- キャプションは上が良いです。子どものためにではなく、大人が絵カードを探すときに楽です。
- 作り方は徐々に進化します。時々情報収集して、絵カード作りを楽にしていきましょう。

最後に、絵カードを長年作り続けてきた者として
絵カードには、作り手の性格が出ます。そして絵カードは、その絵カードの使用状況が滲み出ます。


- 綺麗に見える絵カードは、作って間もないか、使われず役に立っていない絵カードです。
- くたびれて見える絵カードは、よく使っていて、役に立っている絵カードです。
まあ、1年に一回しか登場しない綺麗な絵カードもあり、そんな絵カードはここぞという時に威力を発揮していますがね。
あなたの絵カード作りを応援しています。


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